新聞は読者の心を映し出す鏡である、そしてタイムズ紙は

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新聞の役割と言えば、誰でもニュースや情報を読者に伝えることを挙げるだろう。だが、情報の伝達だけが新聞の役割かと言うと、必ずしもそうではないようだ。

オリンピックやワールドカップで日本選手が金メダルを取れば、スポーツ面だけでなく一面にも大きな写真入りで記事が掲載されることは珍しくない。社会面でも歓喜に沸く日本各地の様子が紹介されるだろう。この時、新聞を読む多くの読者は日本人として喜んでいるに違いない。また、地方紙ではその地方に関わることが特に大きく取り上げられる。この時、読者は自分がその地方の人であることを実感するに違いない。このように新聞には、情報を伝達する役割の他に、特定の国民、地域、集団、一言でいえばコミュニティの一員であることを読者に認識させる機能もある。

ここに過去の新聞を研究する価値があるのだ。現代の朝日新聞や読売新聞は現代日本人の意識を知る上で不可欠の材料であり、日刊ゲンダイや夕刊フジは現代日本の男性サラリーマンの意識と生態を後世の歴史家が研究する際に欠かせない歴史資料となるはずだ。

そしてタイムズ紙はイギリス国民を知る上での格好の媒体なのである。十八世紀後半に創刊されたタイムズ紙は十九世紀になると最大の読者を得ることによって、押しも押されもせぬイギリスを代表する新聞の地位を獲得した。いつの時代でも新聞は読者の意識や願望を映し出す鏡である。十九世紀のイギリス人、特に中産階級の人々が何を考え、何を望み、何に熱狂し、何に憤慨したのか、これらのことを知る上でタイムズ紙は最高の歴史資料なのである。

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