大英帝国が没落し、タイムズ紙の影響力が衰退した時、クリスタル・パレスが焼失した

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第一回ロンドン万国博覧会の象徴であるクリスタル・パレスは、その後長くロンドンの名所として親しまれてきた。だが現在、クリスタル・パレスを見ることはできない。火事で焼失してしまったのである。1936年11月30日。タイムズ紙は翌日の社説「クリスタル・パレス焼失」で、大英帝国の栄光を記憶する建築物の喪失を悲しんだ。

「賞賛とともに嘲笑を浴びる建築物の常として、クリスタル・パレスも反対の声を受けながらも今日に至るまで生き延びてきた。時間が経過するにつれ、そしてパクストンが万国博覧会という空前の事業を収容するためにハイドパークに打ち建てた時に帯びていた目的と光彩の記憶が薄れるにつれ、クリスタル・パレスはイギリスを象徴する歴史的建築物の性格を獲得するようになった。・・・・・クリスタル・パレスの破壊は大切にしてきた歴史的ドキュメントの破壊のようだ。」

クリスタル・パレスが人々の眼の前に現れた1851年、イギリスは繁栄と栄光の頂点にあった。イギリスを代表するタイムズ紙もこの頃、新聞としては最も影響力を持っていた。それから約八十年後、イギリスは徐々に衰退の下降線を辿り、超大国の地位をアメリカに譲り渡しつつあった。タイムズ紙も同様だ。依然としてイギリス筆頭の新聞との名声は維持していても、購読者数や世論に対する影響力の点で言えば、昔日の面影はない。クリスタル・パレスの焼失は大英帝国の没落を象徴するとともに、タイムズ紙には、過去の栄光をもはや取り戻せない現在の自らの姿と二重写しになって見えたのかも知れない。

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