リスペクタブルな人々のためのリスペクタブルな新聞

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19世紀になるとイギリスでは、日刊紙だけでなく夕刊紙、日曜紙が多数販売されるようになった。特に日曜紙は日刊紙を購読する時間もお金もない労働者階級の人々に受け入れられた。そして、日曜紙ではボクシング等の格闘技や残忍な殺人事件が読者の好奇心を煽るのがよく見られた。

タイムズ紙はこれらの流れから一線を画した。特定の読者層を予め想定することはせず、イギリス国民全体に向けて語りかける戦略を取った。時代はフランス革命を経て国民国家の時代が到来しつつあった。貴族でもなく、産業資本家でもなく、労働者でもなく、特定の身分、階級を超えた国民なるものが形成されようとしていた時代にあって、タイムズ紙は新しい時代の空気を敏感に感知したのだ。

社会が大きく変化を迎える中にあって、旧弊な制度の温存に加担するのでもなく、社会の急激な変革を求めるのでもないところに、時代は新しい価値観を求めていた。自助をベースに社会の緩やかな変革を求める良き市民。この価値観を表現する言葉を探すとすれば、”respectable”が相応しかろう。タイムズ紙は、リスペクタブルな人々のためのリスペクタブルな新聞だったと言えるだろう。

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