タイムズ紙は郵政省にとって目の上の瘤のような存在だった

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電信が発明される前、外国の出来事を出来るだけ早く伝えようと新聞は競い合った。タイムズ紙が創刊された頃、イギリスの新聞にとっては外国の新聞が外国のニュースを報道する際の情報ソースだった。ところが、外国の新聞記事の流通は政府の統制の下に置かれていたため、新聞社が自由に翻訳することは禁止されていた。外国の新聞の翻訳は郵政省で行なわれた。そして、翻訳された記事を受け取る代わりに、新聞社は郵政省に毎年代価を支払わなければならなかった。イギリスの新聞の中には、郵政省の役人に賄賂を贈り、外国の記事をいち早く入手しようという慣行も見られた。

創業者のジョン・ウォルターはこの制度を順守する姿勢を示したが、息子のジョン・ウォルター二世は政府の統制を潜る抜ける方法を見出すことに努めた。そして、自前の特派員と翻訳家を抱えることにしたのだ。これが郵政省の役人の恨みを買うことになった。この時代の郵便は、現代では考えられないほど、郵便物の遅配、誤配、紛失が日常的に見られたが、タイムズ紙宛ての郵便物が郵政省の役人によって意図的に配達が遅らせられることもあったらしい。ウォルター宛の郵便物が郵政省の役人により開封された疑いすらあったと言う。

大陸でナポレオンとの戦争が起こっていた頃、外国紙の情報が郵政省を通じて入らなくなった時、タイムズ紙は郵政省への支払いの必要なしと考え、これを止めた。すると、郵政省の役人はグレイブセンドに船で乗り込み、タイムズ紙宛の郵便物を押収した。タイムズ紙の抗議に対して、郵政省は、郵政省以外のチャンネルを通じて外国の新聞を受け取ることは禁止されているとの型通りの声明を出した。

タイムズ紙は郵政省にとってみずからの利益の基盤を掘り崩そうとする憎むべき存在だったのだ。

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