タイムズ紙の読者は世界初の世界一周旅行を紙上で追体験した

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商品と金と人が地球規模で動くグローバル化の時代。人の移動の理由は様々あるが、観光も大きな要因の一つだ。二十一世紀は観光の時代だと言う人もいる。観光の時代の起源を辿れば十九世紀に辿り着く。産業革命を経て、鉄道や船舶などの交通手段が発展した十九世紀は人々が観光旅行を発見した時代だった。

観光旅行に欠かせないのが旅行代理店。世界最初の旅行代理店は、もちろんトーマス・クック社。鉄道時刻表でも有名だ。トーマス・クックが団体旅行を企画したのが1841年。十年後の1851年にロンドンで開催された万国博覧会を見学した人々の中には、クックの団体旅行を利用した人も多かっただろう。

国内だけでは飽き足らず、ヨーロッパ大陸や中近東への海外団体旅行も手掛けるようになったクックが、その先に世界一周旅行の企画を構想したとしても不思議ではない。大型汽船による世界初の世界一周旅行にはクック自身が添乗し、途中日本に立ち寄ったことはよく知られている。

この旅行中、クックはタイムズ紙に旅行の経過報告を送っていた。その報告に基づく「世界一周(Round the World)」との記事が1873年の1月から3月にかけて4回に分けてタイムズ紙に掲載されている。タイムズ紙の読者は世界初の世界一周旅行を紙上で追体験することで、海外への思いを募らせたことだろう。

クックの世界一周旅行は、出発前に「90日で世界一周」との触れ込みでタイムズ紙に広告が掲載されたが、実際は220日ほどかかったようだ。ところで、クックが世界一周旅行を企画した1872年に、もう一つの世界一周旅行があった。こちらはフランス発。もっとも、こちらの方はフィクションである。ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』だ。この時代、人々の眼は外国に向かい、世界はグローバル化しつつあった。

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