タイムズ紙のキャロライン王妃擁護は、世論の動向を見据えた上での戦略だった

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タイムズ紙がキャロライン王妃を擁護したのは、虐げられた王妃に対する義憤の念に駆られてというよりも、むしろ世論の動向を見据えた上での判断だった。イタリアでの王妃の不貞疑惑に関する調査、国王の反対を振り切ってのイギリスへの帰国、国王との結婚を解消させるための刑罰法案の貴族院での審議は、新聞紙上で大きく報道され、大衆の関心を惹きつけた。圧倒的多数の国民はキャロラインを擁護し、その帰国を歓迎した。タイムズ紙は1820年6月5日の帰国の翌日、社説で、「これまでイギリスの海岸には様々な上陸が行なわれ、その後の戦争や革命の発端となった。主なものを挙げると、ウィリアム征服王のヘイスティングス上陸、ヘンリー七世のミルフォード・ヘイブン上陸、オレンジ公のトーベイ上陸だ。・・・・・だが、これらの上陸も、昨夜の女王のイギリス再上陸に比べれば、この大都市の人々の高揚感は大きくはなかったであろう。」と、興奮気味に女王帰国を歓迎した。

フランス革命勃発から30年ほど経過し、社会には旧弊な制度に対する反抗の機運が高まりつつあった。そのような状況の中で起こったキャロライン王妃事件は、専制的な政府に対するプロテストのシンボリックな意味を持つようになったと考えられる。時代の世論を敏感に感じ取ったタイムズ紙は、世論の導きにしたがってポジションを定めるという、当時としては革新的な方針を編み出したのである。キャロライン王妃事件の報道により、タイムズ紙の販売部数は7,000部から一挙に15,000部に増加したと言われている。

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